第26回知的財産翻訳検定試験 参考解答訳と講評



参考解答訳および講評の掲載にあたって

 当然のことながら翻訳の試験では「正解」が幾通りもあり得ます。
 また、採点者の好みによって評価が変わるようなことは厳に避けるべきです。このような観点から、採点は、主に、「これは誰が見ても間違い」という点についてその深刻度に応じて重み付けをした減点を行う方式で行っています。また、各ジャンルについてそれぞれ2名の採点者(氏名公表を差し控えます)が採点にあたり、両者の評価が著しく異なる場合は必要により第3者が加わって意見をすりあわせることにより、できるだけ公正な評価を行うことを心がけました。
 ここに掲載する「参考解答訳」は作問にあたった試験委員が中心になって作成したものです。模範解答という意味ではなく、あくまでも参考用に提示するものです。また、「講評」は、実際に採点評価にあたられた採点委員の方々のご指摘をもとに作成したものです。 今回の検定試験は、このように多くの先生方のご理解とご支援のもとに実施されました。この場をお借りして御礼申し上げます。
 ご意見などございましたら今後の検定試験実施の際の参考とさせていただきますので、「参考解答訳に対する意見」という表題で検定事務局宛にemail<kentei(at)nipta.org>でお寄せください。(※「(at)は通常のメールアドレスの「@」を意味しています。迷惑メール防止対策のため、このような表示をしておりますので、予めご了承ください。)


1級/知財法務実務


第26回 知的財産翻訳検定 1級/知財法務実務 講評

【問1】
 問1は、外国から日本にされた特許出願(いわゆる外内特許出願)について、その審査過程で日本特許庁から受けた拒絶理由通知に対応する場面を想定しました。このような場面で、日本側の代理人としては、拒絶理由通知の内容を依頼元である特許出願人に連絡した後、その指示に応じて以下のような対応をとることが考えられます。
 a 依頼元の求めにより必要に応じて補正案を作成し、それに基づく拒絶理由に対する反論骨子を起案する。
 b 依頼元が立案した補正案と拒絶理由に対する反論の趣旨に基づいて手続補正書、意見書を作成する。
 ケースaでは、日本側代理人は意見書の概要を依頼元に提示してその承認を受ければ、必ずしも提出する意見書自体の翻訳まではする必要がない場合が多いと思われます。本問は、例えばケースbの場合に、依頼元が、原案に基づいて起案された意見書の内容を確認したいという意向を持っている場合に発生する翻訳業務と想定することができます。より具体的には、例えば翻訳者が、弁理士が起案した意見書の英訳を依頼された場合の業務が想定されます。
 拒絶理由通知は、特許出願を審査した審査官が、その出願に特許することができない理由を発見した場合に、出願人にその旨を通知して、手続補正や意見陳述の機会を与えるものです(特許法50条)。拒絶理由は、特許法49条に限定列挙されています。本問の翻訳対象箇所は、審査官が示した先行技術に対して進歩性を有しないとの拒絶理由に反論している部分です。特許出願人は、指摘された請求項に記載されている発明が先行文献に記載されている発明と異なる構成を有し、それに基づいて先行文献の発明では得られない技術的効果を奏することを主張する内容です。
 まず翻訳全般としては、特許明細書の翻訳と比較して、原文の内容を過不足なく伝えられる範囲であれば、原文の表現を忠実に翻訳文に反映させることにこだわる必要がないと言えるでしょう。この点では英文としてより自然な表現に寄せることができる性質の翻訳作業であると言えましょう。このことを踏まえて、意見書で頻用される用語、表現、例えば「引用文献には一切開示も示唆もされていない」、「当業者」、「単に引用文献1に引用文献1を組み合わせたとしても」、「引用文献1と引用文献2とに基づいて本願発明の構成に容易に想到することができたとは到底言えない」等の語句、表現を定型的なパターンとして記憶しておくと、翻訳作業の効率化に役立つと思います。
 個々の答案は概ね原文の意味を適切に理解されて翻訳されていましたが、上記のような基本的な用語等になれておられるかどうかで評価が分かれた部分がありました。そのほか、修飾語句の係り受けについて読み違いをされている例、あるいは技術用語(「熱移動」等)の訳語について適切に決め切れていない例が散見されました。参考解答例は、以上の点に留意して、一つの翻訳例を提示するもので、これを参考により原文の意図を的確に伝達できるような表現等を工夫する一助となれば幸いに思います。
 なお、外内特許出願では、拒絶理由通知を受けたとき、いち早くその事実を依頼元に連絡する必要がありますが、翻訳作業に時間を要して連絡が遅れがちとなることがあるのは頭の痛い問題です。本稿執筆者は、この問題に対応するために、特許庁ウェブサイトの「ワンポータルドシエ(One portal dossier)」から機械翻訳により生成された拒絶理由通知英訳を取得して送付する対応を通常とっています。機械翻訳の精度の問題からこのような対応を問題視する向きもあるようですが、審査官の具体的指摘事項については別段、少なくとも拒絶理由が通知された事実とその根拠は伝えることができますので個人的には有効な対応であると考えています。問題からは離れましたが参考のために申し添えました。
 機械翻訳の性能向上により、知財翻訳の分野にも変革の波が寄せていることは事実だろうと思います。しかし、原文の意味、ニュアンスを把握した上で他言語に移し換えるという高度な作業の評価はこれからも優れた翻訳力を持った人間の介在なくしてはなしえないように思われます。これからも多くの実力者が本検定にチャレンジされることを切に希望しています。

【問2】
 「知財法務実務」の翻訳に携わる方とは、特許事務所・法律事務所、企業内知財部・法務部等のそれぞれの立場において、いわゆる特許明細書翻訳以外の翻訳ニーズを満たすことを期待されている人材との想定の下、「知財」の名の示すとおり特許以外の分野にも「法務」の名の示すとおり権利活用・行使の場面にも対応することのできるジェネラリストとして、かつ法律関連文書を取り扱うことのできるスペシャリストとしての力量を試すことを目的としています。
 上記に鑑みて、本問では、ジェネラリストとして「あまり知識のない分野の題材であっても、想像力を駆使して設定背景を咀嚼することのできる力」、またスペシャリストとして「文書の細部にまでこだわることのできる力」を見ることに主眼を置いています。したがって、従来から繰り返し強調しているとおり、今回の場合であれば、商品化実務や著作権・商標法などの知識は何ら要求しておらず(これらはあれば加点要素です。)、「和文和訳(=原文咀嚼)」と「細部までの正確性」とをどこまで追求できているかを判断基準としています。
 各小問について、第1条(許諾条項)は、いずれの受験者も背景理解はおおよそできていたように思いましたが、細部の正確性の点で点差がつきました。例えば、「許諾地域別に定める期間」(つまり許諾地域が変われば、別の期間が設定されているとの趣旨)について、「地域別」のニュアンスがよく表現できていなかったり、また定義語についての指示を遵守できていなかったりする答案が見受けられました。なお、ほぼ全ての答案で、商品化が「commercialize」と訳出されていましたが(間違いではないので減点はありません。)、キャラクターなどの商品化では「merchandize」と称することが大多数ですので、commercializeというと相手方がピンと来ない可能性もあります。また、作品が「Work」と訳されていましたが(これも間違いではないので減点はありません。)、本問では「映画」という前提がありますので、このニュアンスが表れるよう「Picture」などの訳語を当てることも候補として検討できるかと思います。今後のご参考にしていただければと思います。
 第10条(保証条項)は、非常に多くの受験者が「許諾商品若しくはその製造に用いられる発明、許諾商品の外観意匠、本作品若しくは本キャラクターの名称若しくは図柄に係る商標、又はその他許諾商品のいずれかの要素」でつまづかれました。特に最初の「許諾商品」について、文意は「許諾商品・・・に用いられる発明」であるにもかかわらず、「許諾商品・・・が抵触し又は」と読んでしまった答案が散見されました。確かに字面だけを追えば、後者のような読み方もできるのでしょうが、ここでは、文頭にもかかわらず、「若しくは」という接続詞(「又は」よりも小さい単位の接続詞)が使用されていますので、文頭では大きい単位の「又は」を使うことが自然なのになぜ唐突に「若しくは」が使われるのだろう?と疑問に思わなければなりません。そういう疑問の目で見ると、「その他許諾商品のいずれかの要素」の前に大きい単位の「又は」がありますので、ここでは、・・・発明、・・・外観意匠、・・・商標、その他要素という4つのまとまりでとらえていることが分かります。とすると、冒頭の「許諾商品」だけ、発明、外観意匠、商標、その他要素のいずれとも関連付けずに訳出することは変だと判断できるかと思います。さらにいうならば、次のところで「特許権、意匠権、商標権・・」と出てくるところからすると、「発明、意匠、商標・・・」とこれに対応する権利を対比させているのだということが分かりますので、この点からも冒頭の「許諾商品」だけ、「特許権、意匠権、商標権・・」と対比させずに訳出するのは変だということが判断できるかと思います。
 また、多くの答案で、「保証」の訳語として、guaranteeが当てられていましたが(間違いと言い切れないので減点はしていません。)、guaranteeというのは、債務保証(債務者が支払わないときに債務者に代わって支払うこと)や品質保証(品質に問題があった場合には無償で修理交換すること)などのように、保証対象物件(上記例では債務、品質)の保証が崩れた場合、保証対象物件そのものを回復(債務であれば履行の代行、品質であれば修理交換)する意味合いを持っています。一方、「保証」の訳語としては、「warrant」もありますが、こちらは広く保証対象物件に対して保証者が責任(保証対象物件そのものの回復も可能であればその射程に入るのでしょうが、多くの場合は保証が崩れた場合には契約解除を受ける責任や損害賠償をする責任を負うというより広い責任)を負っているという意味合いを持っています。本問では、第三者権利の侵害を犯した場合、保証対象物件たる本作品や本キャラクターの権利を回復する(第三者権利を侵害しないように権利確保する)責任を排除することももちろん想定にあるのでしょうが、実際にはこのような場面では、契約の維持(キャラクターを使えないのに、ロイヤルティだけは払わないといけないのか?)という点や第三者に対する損害賠償の点がより問題になりますので、広くwarrantの語を当てる方がより原文のニュアンスにも、実務にも即しているように思われます。
 なお、本問では、「・・発明、・・外観意匠、・・商標、・・要素が、・・権利と抵触し」とありますが、法律論として、発明などの物件が権利と「抵触」するというのは適切でありません。「抵触」とは権利と権利が衝突することをいい(例:特許法72条)、物件が権利と衝突する場合は「侵害」と称するべきところです。「取り込む」についても同様で、こちらは物件が物件を包含することをいうべきところです。この点、不適切な表現が含まれたままの出題となりましたことを謹んでお詫び申し上げます。いずれにせよ、この点は何ら点数に影響していませんので、ご安心ください。
 その他、全体を通じて気が付いた点としては以下のとおりです。ご参考までに紹介します。
 ●「免責」という意味の英語で、「hold 〇〇 harmless from △△」という成句が辞書に掲載される場合がありますが、意味合いに注意しましょう。この成句は、文字通り、△△という害悪から〇〇が被害を受けないように防御することを言っており、ライセンス料支払義務を免除するという文脈では不適切です(releaseなどの訳語が適切です。)。「免責」とは、何の責から免じることを意図しているのかを吟味することが肝要です。
 ●定義語の挿入のし方(日本語の「以下〜という。」を英文のどこに挿入するか)について、英文では対象となる単語の直後に挿入する方法(例えば、「〜の商品」を「許諾商品」と定義する場合、最初にproductが登場した直後に(the “Licensed Product”)とする)と、対象となる単語の一連の修飾句/節が記載された後に挿入する方法(例えば、上記の例であれば、product that is set out in Exhibit A hereto (the “Licensed Product”)として、修飾節たるthat以下の後に挿入)があります。いずれでもよいですが、読みやすさでいうと後者の方がよい場合がありますので、推敲の際にどちらがより読みやすいか比較検討して決定されるとよいかと思います。
 ●「諸条件」について、termsのみを訳語にあてている例がありました(減点はしていません。)が、terms and conditionsをあてた方がよいように思います。Termsもconditionsも日本語に訳せばいずれも「条件」なのですが、termsとは金額や期間などの取り決めそのものをいう一方、conditionsとは停止条件、解除条件など法律的な条件(・・・したら、xxxになるという関係)を定めるものをいいます。本契約の諸条件という場合には、取引の取り決めのそのものもそうですが、・・・したらxxxになるという関係も含めていると読むべき場合がほとんどですので、どちらか一方だけにならないよう注意しましょう。
 ●「本契約」などの「本〇〇〇」を「Present 〇〇」と訳出する例が見受けられました(明細書翻訳をされている方かとお見受けします。)が、法務系の文書では、「本」をPresentとは訳しません(「現在の」という意味を与えてしまうので)。この「本」とは、単に定義語であることを明示する意味合いであることがほとんどですので、法務系の文書では定義語として各単語の先頭大文字にて訳出します(the Agreementなど)。
 ●同じく、明細書翻訳をされている方かとお見受けしましたが、「規定する」を「define」と訳出する例が見られました。法務系の文書で「define」というと、意味の定義のことです。条項により「規定」するの意味では、provideやset forth、prescribeなどを用います。Defineとしてしまうと、対象条項に定義が記載されるのかと誤導しますので注意要です。
 最後に、繰り返しではありますが、どの分野の翻訳でも和文和訳(字面追いは厳禁)を徹底すること、また法務分野では原文に対して「足さない、引かない」こと、細部までこだわることが質に大きな影響を与えます。残念ながら今回合格とならなかった受験者にも、上記した点などを参考にされ、ぜひ再度チャレンジしていただきたいと思います。

問題(知財法務実務)PDF形式     参考解答訳(知財法務実務)PDF形式




1級/電気・電子工学

第26回 知的財産翻訳検定 1級/電気・電子工学 講評


 今回は受験者のレベルが非常に高く、受験者16人中10人が合格でした。問題がやや素直すぎた感もありますが、やはり受験者のレベルが高かったと思われます。

 不合格答案の多くは、技術の理解が不十分で文章の係り受けがおかしい訳文や、原文に忠実でない訳文が散見されました。文章が長くて係り受けが複雑になり、全体の意味が分かりにくい場合がよくあります。そのような場合は、技術的なロジックを追って正解にたどり着かねばなりません。特許翻訳に限らず、技術翻訳は「ロジック」「文脈」を推理して訳すことが大事です。個々の文章に惑わされずに全体で訳すようにして下さい。また原文に忠実に訳すことが大前提です

 問1の発明は、エネルギー分散型X線検出装置に関するものです。請求項1で「電子ビームやX線などを試料に照射する」の誤訳が多かったです。「irradiate」の使い方を勘違いしているようです。「irradiate an electronic beam to a sample」は間違いで「irradiate a sample with an electronic beam」が正解です。「radiate」や「emit」を使って「radiate an electronic beam to a sample」とすることも可能です。

 問2の発明は、画像符号化及び画像復号装置に関するものです。「フィルタバンクと呼ばれる」の係り受けを間違えている訳が複数ありました。これは「ハイパス・フィルタとローパス・フィルタとを組み合わせたフィルタ」に係ります。「ハイパス・フィルタ」や「方式」に係るわけではありません。文脈から推理して下さい。また「帯域毎に符号化を行う」を「帯域自体を符号化する」と解したり、「帯域」をbandwidth(帯域幅)と訳した解答もありました。さらに「DCTのように」を安易に「like DCT」とする訳がいくつかありましたが、これは要注意です。文脈からして「unlike DCT」としないと意味が通じない訳文もありました。

 問3の発明は、携帯機及び車両通信システムに関するものです。「従来周知の自己書込タイプのもの」の範囲を間違えている訳が目立ちました。ここは「所定の情報を電圧印加状態で画像表示部に画像表示するとともに、無電源状態で保持することができる従来周知の自己書込タイプのもの」がひとまとまりです。やはり文脈から推理して下さい。また「マイコン23により」の係りを間違えている訳も複数ありました。ここは「マイコン23により〜電圧が印加されていない」とつながります。やはり文脈が大事です。「マイコン」を「microcomputer」ではなく「microprocessor」と訳す解答も複数ありました。気をつけて下さい。

 繰り返しになりますが、常に技術的ロジックを追いながら翻訳して下さい。特許翻訳は探偵が犯人捜しをするようなものです。見た目の文章にだまされずに正確に犯人を「逮捕」して下さい。

問題(電気・電子工学)PDF形式 参考解答訳(電気・電子工学)PDF形式



1級/機械工学

第26回 知的財産翻訳検定 1級/機械工学 講評


 織物、彫刻刀、そして三連扉と、おそらくほとんどの受験者が普段から翻訳している内容からかけ離れた題材でした。難易度も決して低くはありません。それでも三名が合格した他、不合格となってしまった方のほとんどがあと一歩、あと二歩、のところにつけており、合格点には遠く及ばない出来の方はほとんどみられませんでした。ここ数年の翻訳者の皆様のレベルアップを目の当たりにし、当業界にとってはとても心強いことと嬉しく思っています。
 もちろん、合格された方も誤訳等のミスがなかったわけではなく、減点が合格ラインを割るものではなかったということですので、ぜひ今後とも自己研鑽につとめていただきたいと思います。

 さて、今回も頻発する傾向が見られたミスがいくつかありましたので、参考に紹介しようと思います。個々のミスは後で挙げるとして、今回は原理的に深刻な影響をもたらしかねないミスが数名において見受けらましたので取り上げることにしました。
 問1では「わかりやすく」翻訳することを求めながらも「製織時のパイルの抑えが利かず」という非常に曖昧な和文が含まれるという内容でした。確かに少々意地悪な問題かもしれませんが、特許翻訳の現場では、極めてお粗末な和文を欧米の特許庁で通る内容に引き上げながら翻訳することが常に求められています。そのため、その力を試すためにこのようなフレーズが含まれた問題が毎回出題されるのです。
 「抑えが利かず」とは何を意図しているのか、この文だけからは不明瞭です。「押さえが利かず」と解釈してpressを使って翻訳された方が数人いらっしゃいました。しかし、技術的問題はパイルをpressできないというよりは、経糸と緯糸が伸びすぎるため、製織のプロセスを十分に制御できませんでした、ということで、できればcontrolを使って表現して欲しかったところです。解答例ではcontrol was unsatisfactoryとしました。もちろん、これが唯一の正解であるということではなく、このくらい離れて見て、こうやって括ることもできますよ、という一例にすぎません。
 ところが、わかりやすくしようという気持ちが強すぎたのか、和文に含まれていない技術内容を補足して翻訳された方々がおられました。これは特許翻訳上、二重の意味でしてはならないことです。理由は具体的には次の通りです。
 1)間違った情報、あるいはクライエントが意図しない情報を提供することになってしまうリスクがあります。和文が乱雑だからといって、明細書に含まれる内容が、熟慮の上戦略的に選定されていないとは限りません。
 2)不必要な限定を加える危険があります。この問題は従来技術の記載のため、そこまで大きなリスクはないかもしれませんが、仮に実施形態においてクレームのサポート箇所で勝手に情報を追加してしまったら、場合によってはクライエントに大きな不利益を生じさせてしまうことすらあり得ます。
 唯一翻訳において原文にない情報を新たに加えて良いのは、クライアントと十分な意思疎通があり、追記の了承が確実に確認できた場合です。特許事務所等で翻訳されている方はそのようなコミュニケーションの機会もあったりしますが、自宅で明細書翻訳をされている大勢の特許翻訳者はそのような機会がなかなかありません。とにかく、許可なく勝手に新たな内容を作らないか、あるいはそうでもしないと翻訳が不可能と思われる場合は、メモを通して追記の内容を確実にクライエントに伝えることです。

 その他、問1においては次の点が挙げられます。

 今回の織物もそうですが、何世紀も前から存在する技術は、用語も古いものが多く、場合によっては中世英語やさらに古い言葉が使われていることも珍しくありません。また、現在の技術に対するこのような古語の当てはめが統一されていなかったり、業界の中でも用法が統一されていないものもあります。そのため、そういった用語については特段減点の対象にはしていません。ただし、これは織り(weaving)に関する技術ですので、編み(knitting)の技術として翻訳された方々は減点しました。おそらく、最初に「パイル布帛」の訳語を検索した時にknitted pile fabric がヒットしてしまい、その後に「製織」をweavingと訳すもknittedを使ったことと矛盾していることに気づかずに先を急いだのでしょう。こういうわけで、翻訳が終わった後に簡単にでも原文、訳文を読み通して不統一を拾うことも大切です。

 「グリニング現象を生じない」の「生じない」を誤ってdoes not causeと翻訳されていた方の多さに少々驚きました。Causeは他者に働きかける他動詞であるのに対して、この場合は生地が自ら示す現象ですので、exhibit, display, manifest, reveal, showのような自動詞の表現が必要です。せめて、grinning does not occurとすれば減点は免れる形にしました。

 「〜地組織としての伸縮性に富みすぎる」も少々変な日本語ですが、言わんとしていることは明確です。ところが、必要に応じて読み変えず、「として」をそのままasとだけ訳してしまった方が数名おられました。〜too elastic as the base fabric は確かに和文をなぞっていますが、英語では意味が通じません。実際、意味不明な「としての?」は日常的に和文で目にしますが、そのまま訳してはいけません。不自然な和文を翻訳するには、まず「和文和訳」をして和文の情報を整理し、それから翻訳すると良いでしょう。この場合は、「地組織として機能するには伸縮性が高すぎた」が本来言いたかったことですので、stretchability of the base fabric was excessiveのような形で落とし所を見つけることができます。

 和文で「Aであったため、Bが起きた」のような文をそのままの順序でSince A, B occurredと翻訳するのは考えものです。B occurred because of A の方が自然なだけではなく、長い文になった時にsinceの係り受けが不明確になることも避けることができます。

 問2で大きな減点を受けた方はほとんどいませんでした。技術の内容よりは、訳語選定で苦戦された方が多かったのではないでしょうか。「被彫刻物」の訳語としては様々な用語が使われましたが、明らかに誤っていないものは全てOKとしました。主題の「彫刻刀」ですが、これを最善の形で翻訳できたのはわずか数名でした。
 日本で育ち日本の小学校に通った我々にとっては、「彫刻刀」という言葉は図工の時間のために買わされる、版画彫りなどに使う五本セットを意味しています。そこで、ウィキペディアで「彫刻刀」を検索し、Englishリンクをクリックすると、chiselのページが出て来ます。他を調べてもchiselが多くヒットするため、使われたのではないかと思われます。ただし、ウィキペディアの英語のページの画像を見ると、ほとんど全て「のみ」です。Chiselから和文を検索しても、ほとんど「のみ」しか出て来ません。つまり、chiselは彫刻刀の一種ではあっても、全ての彫刻刀がchiselというわけではないのです。Woodcarving knifeも同様です。今回は実施形態ということもあり軽微なミスとして扱いましたが、仮に請求項でこの訳語選択をした場合、大幅に権利範囲を狭めてしまう、致命的ミスになってしまいます。
 では、最適な訳語は何か?様々な種類が入っている日本の彫刻刀セットのうちのいずれかを指す言葉が英語にないのであれば、それらを全てカバーできる表現を使えば権利範囲が確保できます。Woodcarving toolやengraving toolなどが挙げられます。

 この問に限らず、自信がない訳語を探すときは、必ず逆検索で同じところに戻れるかを確認する必要があります。とりあえずそれらしき用語がヒットしたからといって飛びつくのは禁物、2〜3の方向から本当にターゲット言語で原文の意図した意味があるのか、確認しましょう。その訳語を掲載しているサイトや出典を確認するのも良いことです。日本でしか通用しない英訳語が意外にたくさんあるのです。

 問3は、引違い扉のリンク装置に関する発明を対象とするクレーム翻訳です。本問題では、外国特許出願を想定していない特許出願の翻訳を対象とし、「原文に忠実に訳してください。」という設問としました。
 想定される場面は、たとえば国内業務専業であった企業が外国に進出する場合です。このような場合には、外国担当の弁理士は、日本国特許法のみを想定して作成された国内出願用の明細書を翻訳して外国出願用の明細書に仕上げることがあります。しかしながら、外国担当の弁理士が国内担当の弁理士と違う特許事務所に所属する場合等には、特許翻訳者には、原文に忠実な翻訳が求められることがあります。外国担当の弁理士がクレームをリバイズした場合においても元のクレームの優先権の利益を可能な限り完全な状態で確保するためです。
 具体的には、外国担当の弁理士は、リバイズしたクレームを作成し、外国用のクレームとした上で、実施例の何処かに元のクレームの忠実な翻訳を保険として入れておくことがあります。仮にリバイズによって権利範囲が少しシフトしても、元のクレームの忠実な翻訳を基礎として何時でも元に戻すことができるからです。

(1)試験結果(概要)
 このようなタイプの設問は過去に行われていませんでしたので、米国出願を想定してリバイズされた答案が目立ちました。しかしながら、発明の対象が適切に表現されていれば、リバイズの有無に拘わらず合格としました。技術内容は、概ね良く理解されていました。
(2)「閉扉時」
 閉扉時の語を閉扉動作時のニュアンスで訳す答案が目立ちました。幾何学的に考えれば、動的でなく静的であることが分かると思います。
(3)「各、それぞれ」
 「respectively」の誤用が目立ちました。respectivelyは、eachやrespectiveと比較して、使用方法が厳しく限定されていますので、気を付けてください。
(4)「特徴とする」
 「characterized in that」と訳す答案が散見されました。「原文に忠実に訳してください。」との指示を意識して訳抜けを恐れたのだと思われます。日本用の特許請求の範囲における「特徴とする」の語は、全く何の意味も持っていません。完全に無視することができます。一方、「characterized in that」は、特に欧州特許出願では、特別な意味を有するキーワードです。「特徴とする」及び「characterized in that」は、見た目が似ているだけで実質的に全く違うフレーズと考えてください。

 冒頭にも述べた通り、全体としては割とレベルの高い出来でした。しかし、難解な文を訳せていながら、causeやrespectivelyの誤用といった、基本的なミスも多く見られました。上達は必ず基本の上に成り立っているものです。皆様の今後のご活躍に期待しています。

問題(機械工学)PDF形式 参考解答訳(機械工学)PDF形式




1級/化 学

第26回 知的財産翻訳検定 1級/化 学  講評


【問1】
 特許請求の範囲(クレーム)は審査対象となる発明を確定するものであり、特許化後は権利の基礎になるものですので特に重要です。あいまいな表現や、複数の意味が考えられて侵害事件の裁判などで争いの元になる訳は不適当です。明確で疑義の生じない翻訳にしましょう。コンピュータを使用しているのですからスペルチェックを行いましょう。殆どの解答者が、比較的良くできていました。

【問2】
 この試験は、実際の翻訳作業に即した環境で受けることができ、コンピュータもネットも自由に利用できます。なので、ネット検索を活用しましょう。解答前に翻訳対象が関係する技術分野を調査し、その分野で通常使用されている専門用語を選択してください。その技術分野に関わっている会社のHPなどで確認できます。念のため複数例で確認すると良いでしょう。「ビール粕」がどのような工程で発生するか、理解の無いまま翻訳しているように見える解答者が散見されました。「炭化物」に関して、carbideを辞書で調べれば、「炭素と金属元素との化合物。特に,カルシウムカーバイドをいう。」とあります。なので、複数の意味のどちらか不明なcarbide ではなく、carbonized productsが適切です。

【問3】
 問3は錠剤等に使用する崩壊剤に関する問題でした。内容的にはそれほど難しい問題ではありませんでしたが、複数の因果関係を一つの文でまとめて記載している点が厄介です。内容を整理し、複数の文に区切って訳さないと、理解の困難な訳文になるおそれがあります。
 第1文は「崩壊剤」の定義を説明しています。「崩壊剤」の訳語としてはdisintegrantが一般的なようです。他にも「口腔内崩壊錠」や「農薬粒剤」等の専門用語が登場しますが、このような用語は定訳があると推測されますので、最初から自分で訳語を創作せず、当該技術分野から定訳を見つけたいところです。
 一般的な用語の定義は、辞書やインターネットで調べると、似たような英文が見つかります。例えば、Collins English Dictionaryでdisintegrantを調べると、"A disintegrant is an agent, used in the preparation of tablets, which causes them to disintegrate and release their medicinal substances on contact with moisture."という定義が見つかりますので、これを英訳の参考にすることができます。
 第2文は、前半が口腔内崩壊錠の一般的な説明となっていますので、本発明の説明に移る前に一旦文を区切った方がよいでしょう。また、本発明の崩壊剤用組成物の成分として「水膨潤性高分子(A)」と「糖類(B)」が登場しますので、これらの説明も異なる文にすると明確な訳文となります。

【問4】
 問4は重合体の合成に関する問題でした。合成プロセスとしては比較的シンプルですが、量や比率の表現に悩まれた方が多かったのではないかと思います。
 「秤量」はweighと訳すことができます。weightも動詞として用いられますが、動詞のweightは通常「重み付けする」という意味になります。また比率の記載は、何の何に対する比率であるかを理解して訳すことが重要です。量や比率についてはさまざまな英語表現がありますので、表現の引き出しを増やしておくと実務で役立ちます。
 「量体数」は重合体を構成するモノマー単位の数を意味しますので、monomerにunitsを補って訳すと、より明確です。また「混入」にさまざまな訳語が用いられていましたが、ここはcontainで十分通じます。見慣れない訳語を使うと思わぬ誤解を生じるおそれもありますので、まずは平易な言葉で訳してみるのがよいかと思います。

問題(化学)PDF形式 参考解答訳(化学)PDF形式



1級/バイオテクノロジー

第26回 知的財産翻訳検定 1級/バイオテクノロジー  講評

 全体の印象として、単複をいい加減に扱っている翻訳が目につきました。請求項では単数を使うものの、実施の形態や実施例などでは、複数を使うことが多いです。また、英語の名詞には、可算名詞・不可算名詞の区別があり、不定冠詞を取るか取らないかが異なってきます。さらに、可算名詞・不可算名詞の両方の形式を持つ名詞の場合、意味が変わってくることが多いです。例えば、問1のsugar composition やsweetnessは、ここでは不可算名詞ですので、不定冠詞は不必要です。こうした点に注意して、冠詞や単複を判断してください。
 問1では、全員「水切り栽培」が訳せていませんでした。「水切り栽培」をグーグルにかけると、まずdraining cultivationが出てきます。しかしながら、draining cultivationをグーグルにかけても、ほとんど検出されませんので、正しい英語ではないことがわかります。そもそも、drainというのは、排水管などの意味があって、「水切り」に当たるとしても、「水切り栽培」の「水切り」とは意味が異なります。「水切り栽培」というのは、ネットでもすぐに調べられるように、水を少なくして育てる栽培方法です。そのような栽培方法を英語で表現してもらえればよく、内容が正しければ正解とするつもりでした。例えば、cultivation under water stressやcultivation with limited water supplyやcultivation with insufficient water supplyなどが考えられます。自分の知らない日本語を訳すときには、まず、日本語の意味を理解し、それに対応する英語の候補が挙がったら、その英語が正しいかどうか確認する作業が必要です。この作業は、翻訳者としての基本的な確認作業ですので、この作業を怠っていると考えられる答案は、大きな減点になります。
 また、上述したように、可算名詞・不可算名詞に注意が向いていない受験者が多いように見受けられました。なお、sweetnessの強弱を表すには、strong-weakではなく、high-lowを使用します。
 問2は素直な問題で、比較的容易に訳せたかと思います。whereinやcompriseのような請求項で使用する用語を使用されていた方がおられますが、compriseは、通常の英語では、含むものと含まれるものが逆の場合にも用いられます(つまり、「構成する」の意味になる。(ex.) Nine players comprise a baseball team.)ので、安易に使うと不明瞭になりかねません。従って、請求項特有の表現は、なるべく明細書では用いないようにしましょう。
 問3は、実験の結果を訳す出題でしたが、余りできはよくありませんでした。例えば、1405尾や2尾といった日本語を、1405 tails, 2 tailsといった訳とした受験者がいましたが、ここでいう「尾」は、「匹」の意味であり、tailsと訳したのでは、意味が通じません。また、fishは、複数形としてfishesも使うネイティブも近年はいるようですが、複数種類の魚を指す場合の複数形としてはfishesを使用し、複数匹の魚の場合には単複同形のfishを使うべきです。問4とも共通しますが、生物名は、一義的に解釈されるように、例えばtomatoのようによほど一般化しているものではない限り、できるだけ学名を使うほうが望ましいと思います。また、「6割強」の表現は、6割を少し超えるという意味です。また、1.6倍と解釈された受験者や、60%の前にaboutをつけた受験者がいましたが、ご注意ください。なお、数字と%の間にはスペースを入れないのが正式な表記です。
 問4は、後半となって時間との関係か、他の問題よりも訳抜けが目立ちました。また、本問は、日本語としてやや難解な請求の範囲だったと思います。日本語として意味が取り難い明細書や請求の範囲を訳す必要があることも多くあると思いますが、そのようなときには、1)日本語よりも限定的な英訳にならず、2)英文として意味が通るように、難解な日本語を意味の通る日本語を考えてから英訳するという作業が必要となります。例えば、請求項2は、まず、アブラナ科植物が、わさびEutrema japonicumであることという限定に加え、使われる部分が、根のように見える蕎麦を食べるときにすりおろす部分と、わさびEutrema japonicumの葉とであるという限定があると考えてください。なお、この根のように見える部分は、ネット上には根(root)又は地下茎(rhizome)という記載も見られましたが、厳密には肥厚して短縮化した茎(stem)のことです。ネット上の文献でも情報が錯綜していましたので、rhizomeでも減点はしていませんが、実際には、この単語一つで権利範囲が変わってくることを考えると、依頼を受けたときには、依頼者にコメントをつける等の配慮が必要となるでしょう。

問題(バイオテクノロジー)PDF形式   

参考解答訳(バイオテクノロジー)PDF形式



2級

第26回 知的財産翻訳検定 2級 講評


 【問1】
 <1.1>請求項の構成要件の誤解が見られた。今回の内容では、

 (1)水素ガス生成システム(有機廃棄物供給装置、水素精製装置)
 (2)水素ガス供給システム(圧縮機、蓄圧器、ディスペンサー)
 (3)圧力制御装置
 (4)流量制御装置
 の四者が並列の構成要素です。
 この理解が間違っていてはどうやっても正解には至りません。

 原文は、明確に改行で構成要素を示しているのですから、素直に表現すればよいと思います。このことに関連して、セミコロン、カマが適切に使用されていない解答が目につきました。

 <1.2>comprising
 備えるの下位にまた備えるがある二重構造です。後者はincludingなどがよく使われると思いますが、最近ではcomprisingの二重使用も認められているようです。

 <1.3>技術的理解
 「前記水素を所定の圧力にする」とは圧縮(compress)することです。a compressor for regulating a pressure of the hydrogen to a predetermined pressureなどの訳も不可とはしておりません。

 <1.4>用語と構文
 1)炭化物carbide、部分燃焼partial combustion、水性ガスwater gasなどは調べれば必ず正しい訳語が得られます。
 勘違いの例は、水蒸気をmoistureとした例がありましたが、water vaporです。

 2)前記蓄圧器の圧力に関して、「変化する」の訳語としては、「変動」の意味を汲んだvary が望ましいと思われますが、change も正解としてあります。

 3)「供給量を指示する」の訳として、”instruct an amount of ..”、などのように、「供給量」をinstructの直接の目的語として書いた答案がかなりありましたが、通常は指示を受ける対象(例えば「部下」、「生徒」)が”instruct”の目的語になるのではないでしょうか?また「指示する」を”direct”、”indicate”とした訳も目につきましたが、同様に不適切です。


 【問2】
 <2.1>【0003】の文章のように長くて複数の事実を述べている文章をそのままの構成で訳そうとせず、意味上の区切りで切ることも考えるべきでしょう。

 また「従来から提案されている電力会社から供給される商用電力と家庭用の発電設備からの電力を併用する電源装置では」をそのまま文頭に持ってきて「In electric power supply systems---」と大きな副詞句を前に持ってきて始めるのではなく、electric power supply systemsを主語として考えるなどの「日本語のコンテキストそのものではなく、英語のコンテキストで訳すことがよいと思います。

 【0004】の文章も同様です。
 上述した設備を備えた住宅等の家屋では、特に大きな地震のように電気配線に影響を及ぼす地震が発生した場合、配線損傷による短絡等の2次被害が想定されるため、速やかに電力の供給を遮断することが望ましい。
 を
 In houses such as residences equipped with the above-mentioned facilities,などと始める必要はありません。
 When buildings such as houses having the foregoing combined electric power supply systems are subjected to an earthquakeと始めてよいのです。

 <2.2>「ブレーカが遮断されて」は、技術的には「ブレーカが作動して電流が遮断される」という意味であり、専門的には”trip”などの英語が用いられますが、例えば、the circuit breaker operates to cut the electric powerなどと訳すのもよいでしょう。日本語の字面に引きずられずに意味をよく考えて訳すことが必要です。

 <2.3>電力会社などは不特定多数ですので、無冠詞複数形でしょう。無冠詞複数形を正しく使えるようにならなければなりません。これに相当する日本語の概念は「犬というもの」のような例が挙げられます。

 <2.4>「電力」という意味での”power”は不可算名詞なので、冠詞の用法には注意が必要です。


 【問3】
 <3.1>「またぐ」という表現が難しかったようです。

 <3.2>「回動可能」とはこの場合は、図を見ると分かるように、幼児を拘束状態から解放する、鳥の翼が開くような回転を表します。rotateよりも、腕を開くように、swingなどはどうでしょうか。Pivotも適訳です。
 リーダーズプラス:swing一端を蝶番(チヨウツガイ)や旋回軸で固定されて回転する

 <3.3>技術的意味を表現すること
 「幼児が装着したときに体に密着せず」の密着をadhereとした例が多かったのは意外でした。密着と接着とは意味が違います。
 接着とは接着剤を介して物質AとBとをはがすことができないように取り付けることで、密着は単に、物質AとBとを密に接触させることです。closely contact、tightly fitなどが良いでしょう。

問題(2級)PDF形式         参考解答訳(2級)PDF形式



3級

第26回 知的財産翻訳検定 3級 講評


 解答例と解説をご覧ください。


問題(3級)PDF形式         解答と解説(3級)PDF形式



PDF形式のファイルをご覧になるにはAcrobat readerが必要です。
  


このウィンドウ・タブを閉じる

<問い合わせ先>
特定非営利活動法人(NPO)日本知的財産翻訳協会 事務局
〒160-0023 東京都新宿区西新宿6-10-1 日土地西新宿ビル7F
TEL 03-5909-1188 FAX 03-5909-1189
●e-mail : kentei(at)nipta.org ※
※迷惑メール防止のため@を(at)と表示しております。