第34回知的財産翻訳検定試験 参考解答訳と講評



参考解答訳および講評の掲載にあたって

 当然のことながら翻訳の試験では「正解」が幾通りもあり得ます。
 また、採点者の好みによって評価が変わるようなことは厳に避けるべきです。このような観点から、採点は、主に、「これは誰が見ても間違い」という点についてその深刻度に応じて重み付けをした減点を行う方式で行っています。また、各ジャンルについてそれぞれ2名の採点者(氏名公表を差し控えます)が採点にあたり、両者の評価が著しく異なる場合は必要により第3者が加わって意見をすりあわせることにより、できるだけ公正な評価を行うことを心がけました。
 ここに掲載する「参考解答訳」は作問にあたった試験委員が中心になって作成したものです。模範解答という意味ではなく、あくまでも参考用に提示するものです。また、「講評」は、実際に採点評価にあたられた採点委員の方々のご指摘をもとに作成したものです。 今回の検定試験は、このように多くの先生方のご理解とご支援のもとに実施されました。この場をお借りして御礼申し上げます。
 ご意見などございましたら今後の検定試験実施の際の参考とさせていただきますので、「参考解答訳に対する意見」という表題で検定事務局宛にemail<kentei(at)nipta.org>でお寄せください。(※「(at)は通常のメールアドレスの「@」を意味しています。迷惑メール防止対策のため、このような表示をしておりますので、予めご了承ください。)


 ※採点方法等につきましては、知的財産翻訳検定試験 採点要領 をご確認ください。


1級/知財法務実務


第34回 知的財産翻訳検定 1級/知財法務実務 講評

【問1】
 近年厳しさを増している国際情勢を考慮して、国家の安全保障を経済的な観点から確保しようとする立法措置が講じられつつあります。本年5月11日に国会で成立した、いわゆる経済安全保障推進法案には、発明公開の代償として国家が独占的な権利を付与することにより、産業の発達に寄与するという、特許制度の基本的な制度設計に例外を設ける大きな制度変更が含まれています。立法の趣旨からすれば、もっとも大きな影響を受けるのは、国内で研究開発を含む事業活動を行っている企業と言うことになるでしょうが、機微な発明の情報流出を防止するために発明実施の制限、外国特許出願の制限と言った事項が設けられているので、本法律の施行は、外国企業、外国特許実務家にとっても関心を呼ぶことになると思われます。そういう点で、該当する法律の内容を英語で発信することは今後必要になると考え、本問の出題となりました。
 問題文に記載したように、本問は、経済安全保障法制に関する有識者会議がまとめて公表した「経済安全保障法制に関する提言」から、「特許出願を非公開とすることができる制度」について述べた部分を取り上げています。採点の過程で気がついたいくつかの問題点について共有することにより、参考に供したいと思います。
 まず、全体として文章が長く、各文章中の係り受けも錯綜していたため、原文を整理する段階で困難を感じられた向きがあるようです。特に、「すなわち、我が国の安全保障上極めて機微な発明であって公にすべきではないものが記載されている特許出願については、…制度を導入するべきである。」、「非公開とする発明の選定手続は、…二段階審査制を採用するべきである。」という本文の内容の中核をなす長文をうまく訳出された方は少なかったようです。例えば後者の場合、「一律に本格審査を行うことの問題点」と、それを踏まえた「二段階審査制の内容」と分解することにより訳出が容易となると思われます。
 また、例えば「先願の地位」といった特許法の基本的な用語に関して、優先権や最先出願といった別の概念と混同されている例が見受けられました。特許制度の枠組みとそれを表現するための用語について、一般的な対訳語とともに整理されておくと、効率的な翻訳に役立つと思います。
 特許を含む知的財産制度は、今後も国際情勢等に応じて変化していくことが予想されます。本検定試験においても、そのようなダイナミックな変容に目配りしながら実務家のみなさまに資するような内容を心がけていきたいと考えています。随時ご意見をいただければ幸いです。

【問2】
 「知財法務実務」の翻訳に携わる方とは、特許事務所・法律事務所、企業内知財部・法務部等のそれぞれの立場において、いわゆる特許明細書翻訳以外の翻訳ニーズを満たすことを期待されている人材との想定の下、「知財」の名の示すとおり特許以外の分野にも「法務」の名の示すとおり権利活用・行使の場面にも対応することのできるジェネラリストとして、かつ法律関連文書を取り扱うことのできるスペシャリストとしての力量を試すことを目的としています。
 上記に鑑みて、本問では、ジェネラリストとして「あまり知識のない分野の題材であっても、想像力を駆使して設定背景を咀嚼することのできる力」、またスペシャリストとして「文書の細部にまでこだわることのできる力」を見ることに主眼を置いています。したがって、従来から繰り返し強調しているとおり、今回の場合であれば、標準必須特許や特許ライセンスなどの知識は何ら要求しておらず(これらはあれば加点要素です。)、「原文咀嚼」と「細部までの正確性」とをどこまで追求できているかを判断基準としています。

<各小問共通の点として>
・過去問及びその解説をしっかり読み込んだうえで、解答に臨んでいるとおぼしき解答が多く、契約英語表現としてこなれた表現が多用されている印象を受けました。法律英語や契約英語は、それ単体で学習しようにも教材がなかなか見つからない現状があるところ、過去問を活用することは試験対策のみならず、ポイントを押さえて表現の多様化を図れるように思います。
・定義語である「本標準必須特許」や「本製品」などについて、「本」というところに意識が向いたのか、“this Standard Essential Patent”などとして「this」を用いている解答が見られました。文法的に間違いではないものの、不必要に当該単語を強調する意味になっており、不適切です。定義語の「本」は、単にこれが定義語(つまり英文では先頭大文字で書くべき語)であることを意味しているに過ぎず、「この」などという趣旨ではないです。This+定義語とは、「この本標準必須特許」という意味になりますので、敢えてこの意味で用いる場合でない場合を除き、避けるべきでしょう。

<各小問個別の点として>
・1項1号について、「本製品の製造及び販売のために必要な権利を非独占的に許諾する権限の設定」をうまく咀嚼できていないと思われる解答が見られました。この契約からは、自動運転自動車の自動運転機能に関する標準必須特許について、その特許権者からABCがライセンス(=「本製品の製造及び販売のために必要な権利」の許諾)の管理を委託されていること、ABCが各特許権者からの委託に基づきライセンスを付与する権限があること、が読み取れます。ABCは、「ライセンスを付与してよい」という権限(=authority又はpermission)を各特許権者から受けているのみで、ABC自体がライセンスを非独占的に付与されているわけではないところに注意が必要です。
・1項2号について、「当該追加となった本標準必須特許を、XYZに対して・・・自動的に許諾する」の下りにおいて、「許諾する」(=grant)の目的語として「XYZ」と「本標準必須特許」との両方をとらえる必要があるところ、「本標準必須特許」が目的語になっているのか曖昧になっている解答が見られました。何をXYZに付与するのか曖昧なのは契約解釈でトラブルを起こす可能性を残す危険があり、目的語は明確にしましょう。なお、「本標準必須特許」を「許諾する」とは、日本語としては意味が通じますが、英語にする時には若干の咀嚼が必要です。「許諾する」の英訳として「grant」を用いる場合、「grant」自体は「与える」や「認める」という意味合いのものなので、目的語として「本標準必須特許」をそのまま記載してしまうと、「本標準必須特許を与える(又は認める)」の意味合いになり、舌足らずな印象を受けます。「grant a license for the Standard Essential Patent」などと適宜補ってあげることが必要です。
・2項1号について、「実施」の訳語としては、過去よりお伝えしているように最もぴったりくるのは「exploit」だろうと考えますが、「practice」や「implement」なども(翻訳文ぽさは残るものの)許容範囲だろうと考えます。一方、「use」や「enforce」と訳出した解答がありましたが、「特許の実施」とは、特許対象の物を生産、使用、譲渡等することをいいます(特許法2条3項)ので、「use」だと「使用」のみと誤解されてしまう可能性があります。また「enforce」は、特許権を執行すること(つまり侵害だとして権利行使すること)を意味しますので、実施の意味から遠ざかることに注意が必要です。
・2項2号について、「XYZは・・・理解しており」の構造を捉えられていない解答が見られました。XYZが理解しているとされる内容は、「本製品を構成するいずれかの構成部品について・・・許諾を受けるべきこと」であるので、If・・・, XYZ understands・・・と訳出すると文意を捉えていないことになります(If節部分もunderstandの内容なので)。このように、日本語において大きな主語と述語の間に、条件節が組み込まれている場合、この条件節が述語の目的語になっているのか否かをしっかり吟味する必要があります。
 また、「当該第三者をして別途当該構成部品を含む全体製品について許諾を受けるべき」の下りについて、「(Standard Essential Patents) shall be separately granted by such third party for the entire Product」と訳出された例がありましたが、これでは「当該第三者が許諾を付与する」の意味になってしまっています。上述のとおりgrantは、付与する、認める、という意味で、許諾を与える側の動詞なので、許諾を受ける側の動詞として適切ではありません。許諾をうける側の動詞としては、acquire、obtain、procureなどだろうと思います。なお、acquire、obtain、procureを用いる際にも、上記の1項2号同様、「Standard Essential Patents」を目的語とするのではなく、「license for the Standard Essential Patent」と補ってあげる必要があります。
・2項3号について、「その特許権が無効その他消滅した」の下りを「その特許権が無効又は消滅した」と訳出した例がありましたが、正確性に欠けるものです。「無効その他消滅」とは、無効により消滅する場合と無効以外の理由で消滅する場合という意味で、単に無効・消滅と並べ立てればよいものではありません。invalidated or otherwise ceased to existなどとして、細部に目を向けましょう。
・3項について、「非違反当事者は、契約違反について適用ある・・・救済をも受けることができる」の下りにおいて、「契約違反」=本契約に対する違反と訳出した例が見られました。ここでの意味合いとしては、契約法において契約違反とされる事象について適用される救済のことを意味しているので、「契約違反」の「契約」部分を勝手に「本契約」と訳してはいけません(だから定義語なのか否かが重要なのです。)。「本契約」と言っていない以上、breach of the Agreementではなく、breach of contractとあくまで契約一般の文脈として訳出すべきです。

 最後に、繰り返しではありますが、どの分野の翻訳でも原文咀嚼(字面追いは厳禁)を徹底すること、また法務分野では原文に対して「足さない、引かない」こと、細部までこだわることが質に大きな影響を与えます。残念ながら今回合格とならなかった受験者にも、上記した点などを参考にされ、ぜひ再度チャレンジしていただきたいと思います。

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1級/電気・電子工学

第34回 知的財産翻訳検定 1級/電気・電子工学 講評


【総論】
 今回は、一部の問題文の日本語の解釈が難解で、その解釈を誤ったことで残念ながら不合格となった答案が多かった印象です。その他、細かい訳落ちや訳語の選定ミスによる減点により、僅かに合格に達しなかった答案も少なからずありました。残念ながら僅かに不合格となった受講生の皆様は、めげずに再挑戦していただきたいと思います。一方、めでたく合格となった受講生も、今一度ご自身の答案を見直して、改善点がないかを検討していただければ幸甚です。
 
【各論】
(1)問1は、錠剤への印刷装置に関する従来技術の説明に関する問題でした。日本語としては比較的短文化されており、読み易いですが、因果関係(〜であるため、〜である)の記載が多い問題文です。英語でもその因果関係を表現できるかが1つのポイントになると思います。因果関係の表現を、原文とは変更してしまっている答案も散見されましたが、あまり感心しません。因果関係は技術文書の重要な部分なので、翻訳者としては、それを正確に英語に置き換えてあげることが大事であろうと思います。なお、「構成」、「特徴」、「比較的」など、細かい日本語を落として訳されている答案も多い印象でした。これらを落としても、訳文として大きく意味が変わってしまうわけではありませんが、翻訳者としては、このような単語もできるだけ落とさず、原文に忠実に訳すことが良いと思います。

(2)問2は、ループアンテナに関する発明の実施例の記載に関する問題でした。日本語が非常に冗長で、読みにくい内容であったと思います。こうした日本語は、短文化して訳すことが必須となり、この点は多くの答案は対処することができていたと思います。ただし、短文化するに当たり、いくつかの単語を訳落ちしてしまっている答案が少なくありませんでした。
   また、冗長な日本語の修飾関係を読み誤り、大きな減点となる誤訳となってしまった答案が多くみられました。誤訳の1つは、「第1の周波数領域(1.57GHz)および第2の周波数領域(1.8GHz)の中の直線偏波の周波数領域(1.8GHz)に関連して決められた長さ」の部分です。この記載だけを見ると、1.57GHzと1.8GHzと両方に関連して決められる長さだとも読めなくはないのですが、段落0016の記載をよくよく見ますと、そうではなく、1.8GHzの方だけに関連して決められる長さという意味であることが分かります。訳出では、それが分かるように訳さないといけませんが、そこを読み誤って両方に関連するように読める訳出としてしまったり、日本語と同様に曖昧な訳出となってしまったりという答案が少なくありませんでした。その他、また、「誘電体基板12上に形成され」ているのは、文脈からして「線路導体14、16」ですが、そうは読めない訳出がされている答案も目立ちました。更に、、「〜決められた長さ」を有するのは線路導体14,16ですが、ループアンテナ自体がその長さを有すると訳してしまっている答案も複数ありました。非常に読みにくい問題文ですが、前後関係、及び図面を見れば、本来の意味は理解できます。こうした部分を正確に読み取ることが必要です。なお、本問は、解答対象外の段落0016において、段落0017の文言が登場してきますので、そうした単語は、既出の単語として定冠詞で処理するのが妥当だと思います。

(3)問3は、いわゆるIT系の発明であり、比較的容易に解答できる内容だったと思います。ただし、類似する名詞(回答と解答)があり、これを訳し分けしなければならない点が少々難しかったと思います。文脈からして、回答は正解か不正解か分からないが、回答者が回答した回答、という意味であり、「解答」の方は「正解」のニュアンスであると理解されます。試験委員としては、回答をreply 又はresponse、解答をanswerと訳し分けするのが妥当又は無難であると考えます。この訳し分けが十分出来ず、両方answerと訳している答案が多くありました。また、請求項では、既出の単語を定冠詞とする必要がありますが、その点の処理も若干不正確な答案が散見されました。なお、「問題」に関しては、problemと訳された答案も見受けられましたが、技術内容からして「問題」は、試験等の問題文であるのでproblemはNGです。同様の考えから、「解答」にsolution はNGと判断します。

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1級/機械工学

第34回 知的財産翻訳検定 1級/機械工学 講評


 今回は、正確に単語をターゲット言語に置き換えても良い翻訳文にならない箇所が多く含まれた内容で、概念を掴んで1から文をターゲット言語で書くスキルを持っている受験者が実力を発揮しました。

【問1】
 曖昧な和文表現をいかに英語で表現できるかを問うための問題でしたが、曖昧ゆえに和文の意味を抽出するのに苦戦されていた方も少なくなかったようです。全体的には、「和文の意味はわかるが、どうすればそれが英語で表現できるのかが難しい」パターンと、「英語表現はできるが、和文が何を言いたいのかが汲み取れない」パターンのいずれかに入る方がほとんどのようでした。ちなみに、この問1が上手に解けた方のほとんどが、問2、3も上手に解けています。
 分野としては、白線などを路面に引き直すことにあたっての課題です。ほとんどの方は一度も触れたことがない分野だと思います。技術的には決して難しくないのですが、典型的な曖昧な和文で書かれており、特に段落[0003]では
「路面に塗料を塗る」
「その上に再帰反射材を撒く」
「塗料を乾かす」
の手順をうまく抽出することができるかがポイントでした。中には、塗料の中に拡散した反射材を路面に塗ったり、ガラスビーズを乾燥させたりと、和文の趣旨とかなり違う訳も見受けられました。
 「路面表示」と「路面標示」をどう扱えば良いのか?そもそも、書き手による変換ミスの可能性もありますし、何気なく使い分けた可能性もあります。技術的な差異を区別するために使い分けているとは思えません。そうするならば、訳文では訳し分けても訳し分けなくても、和文原稿の漢字の差異に引っ張られるのではなく、そこに書いてある技術を英語で表現するのが技術翻訳者の仕事です。Displayも使えなくもありませんが、かなり扱いづらい訳語です。Roadとdisplayを一緒に使う場合、気をつけなければ「露天商」という意味になってしまうこともあり得ます。英語圏の中でも、国によって標識・標示の用語や表現は様々ありますので、明らかに間違っているもの以外はOKとしました。
 また、段落[0007]での「ひとたびメンテナンスが行われると、長時間の交通規制が必要となる」をどのように表現するかが難しかったようです。英語表現を間違えると、「一旦白線を塗り直してしまうと、当面の間、その道路は車が通れない」のような、現実では考え難い内容になってしまいます。そして、和文に引きずられてOnce maintenance is performed...にすると、まさにそのようなニュアンスになってしまいます。これに対して、Once maintenance is started...とすれば、「一旦工事が始まってしまうと、しばらく交通規制が必要」のニュアンスにすることができます。和文英訳に関してよく言われることですが、先に「和文和訳」をしておくことによって、ミスも時間ロスも防ぐことができます。

【問2】
 一見難しそうですが、図面と照らし合わせることで、仕組みがよくわかります。そうするための時間を取ったか取らなかったかが、出来を大きく左右するような問題でもあります。
 数名がつまづいたのが、段落[0014]と[0015]にそれぞれ一度ずつ登場する「入力、中間軸14、26」です。前後の文、そして図面と照らし合わせれば、これは「入力軸14と中間軸26」を端折ったものであることがわかります。訳としては、input shaft 14 and intermediate shaft 26でも構いませんし、input and intermediate shafts 14 and 26でも構いません。しかし、これをintermediate shafts 14 and 26とした上で、「入力」を別のところにかけてしまった方が数名いました。注意深く前後と図面を確認して作業すればあり得ないミスですが、このミスが原因で合格を逃してしまった方もおられました。
 このように省略した表現は、日本の機械工学の分野では決して珍しくありません。今回の省略は簡単に正体が突き止められるものでしたが、中には謎解きをしながら翻訳をすることが必要になる場合もあります。「完全な形の原稿でないと翻訳したくない」というような「お姫様対応」ではなく、「何がなんでもこの謎を解いてやる」といった「金田一対応」が翻訳者に求められます。
 また、今回は原文に参照番号誤りが含まれていました。翻訳のフォーマットや原文誤りの対処に関して指示がなかったので、修正してもしなくてもOKとしましたが、いずれにしてもこのような場合はメモを付した方が良いでしょう。

【問3】
 軸受けの密封装置を対象とするクレーム翻訳です。本問題では、問題文中に「パリルートの米国出願用の翻訳文として英訳して下さい。」との注記を入れました。
(1)クレームの特徴
 本クレームは、軸受けの密封装置を対象とし、図面から分かるように、発明の対象となる構成(構造)は比較的にシンプルです。しかしながら、請求項は、いわゆる流し書きで記載され、米国出願用に翻訳するためには「と書き」の形にするともに各構成要素を明確化する必要があります。本問は、高いクレームドラフティングの力量と強い忍耐力が要求される問題です。
(2)合格答案の翻訳方法について
 本問は、揺れが多く解釈が難しい文章から原文起草者の意図を読み取り、原文起草者が米国特許弁護士であれば、どのようなクレームをドラフトしたであろうかを問う問題と捉えても構いません。本問は、クレームドラフティングの力量を問う難問とも言えます。合格答案には、各構成要素を明確化しつつも原文の流れに沿って訳したものと、原文の流れから離れて一からドラフティングしたようなものがあり、原文で特定されている発明が明確に特定されていれば合格としました。
(3)特許翻訳固有の点について
 発明の対象は密封装置です。この密封装置は、回転側内方部材(11)と固定側外方部材間(12)の環状空間に配置されて密封する装置なので、回転側内方部材(11)及び固定側外方部材間(12)は発明の構成ではありません。回転側内方部材(11)及び固定側外方部材間(12)は発明の構成ではなく、発明の構成の特定に必要な要素です。
 このような要素は、プリアンブル(preamble)に記載し、移行部(comprising)の目的語(body)から排除することが望まれます。複数名の方がうまく処理していましたので、加点対象(減点と相殺)としました。興味がある方は、改訂2版米国特許明細書の作成と審査対応実務(立花顕治著)の39頁に関連記載がありますのでご参照ください。
 翻訳能力が高いにも拘わらず、特許実務において固有の使われ方をする用語の誤用が散見されました。「characterized by」は日本語の「特徴とする」の訳語ではなく、欧州特許出願において、欧州弁理士が欧州特許庁のサーチ結果に基づいて中間処理で使用するキーワードです。特許翻訳で使用されることは基本的にありません。「consisting of」は、特に必要な場合に、主として化学やバイオの分野で移行部に使用される語であって、意図しない権利範囲の限定となるので電気や機械の分野で不用意に使用しないでください。

<所感>
 受験者は、基本的な翻訳能力を有する方が多い一方、特許翻訳に不慣れな方が参入されているように感じました。他の分野から特許翻訳の分野に参入する場合には、たとえば改訂2版米国特許明細書の作成と審査対応実務(弁理士 立花顕治著)の第3章及び第4章を読むところからスタートすると効率的だと思います。さらに、米国特許実務家が最初に読む教科書(Faber on Mechanics of Patent Claim Drafting)を辞書として参照しつつ実務経験を踏むことをお勧めいたします。
 また、表現力不足により、正しい翻訳ができずに合格ラインを割ってしまった受験者も目立ちました。知っている単語数の多さや技法に依存するのは問題ですが、同じことを2通りも3通りも別の言い方ができる翻訳者の方が、断然有利です。

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1級/化 学

第34回 知的財産翻訳検定 1級/化 学  講評


 問題文に断りがありませんでしたが、各解答の最初には設問番号等を記載して、どの問に対するものかを明示してくださると助かります。
 今回の解答の多くでみられましたが、同じような意味の単語(fluctuate、change、vary等)は使われ方に違いがありますので、迷ったら調べる癖をつけてください。今はネットの英英辞典で簡単に調べられます。例えば、「の前に」を訳す場合、時間に関してはbeforeやprior toがありますが、位置に関してならbeforeやin front ofでしょう。常にその文章に適切な言葉を選択できることが、マニュアル翻訳の特徴でもあり顧客に求められることの1つですので心がけてください。

【問1】
 固体燃料は微粉化されているので「粉砕された」はcrushedではなくpulverized又はmilledが適切でしょう。crushed pulverizedを重ねて書く必要はない一方、「微粉」に対応する言葉は抜けている解答が散見されました。「変動する」は同じパラメータ内での変化ですのでchangeよりvaryが適切です。「余裕をもって」に対していろいろな解答があって解答者の苦労がうかがえましたが、marginが便利かもしれません。「設備」に対する英語は、「プラント設備」ではfacility、「ユーティリティ設備」ではequipmentが適当なようです。

【問2】
 「除去」はセシウム吸着により行いますのでeliminateではなくremoveを使うのが適切でしょう。吸着adsorbと吸収absorbは区別してください。「吸着水」は吸着されて含まれている水(adsorbed water; fixed water; adsorption water)であり、なにかを吸着可能な水ではありませんのでadsorptive waterは適当とは言えないでしょう。「フェロシアン化金属」はmetal ferrocyanideとferrocyanide metalのどちらでもよいですが、原則に従うなら前者だと思います。原文が長文の場合に切り分けて翻訳可能な場合もありますが、その場合、原文の意味をよく考えて、切り分けた後の文章が元の文章と全く同じ意味を表しているか確認する必要があります。不適切な切り分けは誤訳に直結します。発明の理解に不安があるなら問題文をコピペして検索し、類似文献をあたって努力しましょう。だらだらと長い文章は構成要素の関係が分かりにくいので、切り分けるには危険が伴います。最終的に技術理解に不安があったなら切り分けずに訳しましょう。
 段落0009の最初の長文をどのように解釈するかが、難しい問題であった。係り受けをどのように考えるかについては、結着剤の役割を説明する一文であることを考えると、まずは「フェロシアン化金属化合物を支持基材に決着させる」ことについて述べ、その後に接着強度を説明する流れが自然であるように思われる。このようにとらえると、この段落の最後の一文との対応も良くなるし、実際、英訳した際にも、文章の流れがよくなる。英訳した際に、いきなり「状態」に相当する訳語が出てくるのには、違和感をおぼえる。中程の「微粒子状態のままでセシウム除去剤を使用する」ことのニュアンスを訳出しようとした受験者がほとんどいなかったのは意外だった。そのままの状態では都合が悪いので結着剤を使用しているのであるから、重要なポイントであるように思う。最後の一文は、結着剤を使用する理由を述べた後の結論にあたる部分であるが、最初の一文をふまえて、「支持基材に含浸あるいは塗布した際に」の部分に主語を補っておくと、文章がより明りょうとなると思う。

【問3】
 問題文を利用して、原文に書いていない主語を適当に補う必要があるでしょう。「確認された」はshownとせず、対応する英語を使った方が良いと思います。日本語「コンデンサ」の訳でcondenserを使った解答者もいらっしゃいました。昔はcapacitorと同意で使用されていたので減点はしませんでしたが、技術分野が違うと凝縮器を表す場合がありますので、この場合はcapacitorを選びましょう。悩んだときは検索ワードcondenser capacitor difference(又はmeaning)等で調査すると理解が深まります。金属構造(結晶粒子および前記結晶粒子間を占める粒界)に関する問3では、構成は結晶粒子(主成分)及び粒界(Ge、V酸化物)ですので、「Geが実質的に存在しない結晶粒子の存在割合が90%以上である」は一塊として訳す必要があります。解答者の皆様がセルシウス温度単位を表すノウハウをご存じのようで安心しました。原文に「以上」「以下」と記載されている場合は、疑義を避けるためにあえて発明者が記載している可能性があります。「Inclusive」を付け加えるワザもありますが、何をInclusiveするか裁判で相手方からケチをつけられるのも困りますので直訳するのが無難です。被擬侵害者は自らの製品は記載された方法や数値の範囲外であると主張することが通常です。そのため本問の「比誘電率、比抵抗、高温負荷寿命、交流耐電圧」は明確にするため、正確な用語を用いた方が良いでしょう。「比抵抗」を初記載する場合はせめてelectrical resistivity、できればspecific electrical resistanceとしておくと疑義が生じにくくなります。「高温負荷寿命」に関してhigh temperature accelerated lifetimeは直訳とはいいがたいですが、高温により加速度的な負荷をかけて短時間で得られる評価結果を表すと技術分野で認められているようです。

【問4】
 クレームを翻訳する時は、発明を理解していないと致命的な誤訳を生じます。「少なくとも1種類の熱可塑性樹脂からなる粉体或いは少なくとも1種類の熱可塑性樹脂を含有する粉体を分散した気体」に関して、修飾の係り受けを誤解している解答者が散見されました。特許特有の区別された言い回し「からなる」「を含有する」に着目すると、「(A種だけからなる粉体又はA種を含む粉体)が分散された気体」で一塊になります。なお、式(1)の説明で、日本語にある()を外した解答も散見され、間違いではありませんし英語力がおありの方だとは思いますが、この場合は()を利用したほうが「または炭素数10以上のアルキル基」がどこに係るかが明確になると思います。他の設問も同じですが、特にクレームは権利に直接関係します。欧州の審査実務においてcharacterized(in)は特定の状況で特別な意味で使われているようですし、米国でも裁判で争われやすい文言ですので、クレームでは特に、明細書でも原則「characterizedは使用しない」ようにしましょう。同様に、初出の構成要素か、前のクレーム又はそのクレーム内で既に記載されている構成要素かの区別(「前記」、「該」等)が厳格ですので冠詞(a, an/the, said等)には気を付けましょう。初出なのにtheを付けると、一般的に知られている技術(新規性なし)であるか争いの元になります。冠詞の有無に疑問があれば、ネットで検索して、英語圏で作製された信用できる著者の文献内で、その単語に冠詞を使った例があるかどうかを調査できます。
 方法のクレームからの出題であるが、これも最初の長文をどのように解釈するかが、難しい問題であった。まず、「少なくとも1種類の熱可塑性樹脂からなる粉体或いは少なくとも1種類の熱可塑性樹脂を含有する粉体を分散した気体」の解釈であるが、当業者であれば、この部分は「からなる(consisting of)」と「含有する( comprising)」を並置していると解釈するのが素直であろう。よって、これら2つの粉体を分散した気体を流路に流すのであって、「粉体」と「気体」の2種類を流路に流すと解釈するのは適切でない(これは明細書の他の記載からも裏付けられる)。ただし、「からなる(consisting of)」は一般に、of以降のものしか含まない、というclosedな意味で用いられる用語であるが、クレーム中の後の部分に「該粉体に一般式(1)で示される化合物が含有されている」と記載されている点に注意を要する。つまり、この粉体には、熱可塑性樹脂のほかに式(1)の化合物も含まれてしまっているので、consisting ofの本来意味するところとは整合しない。そのため、この原文の「からなる」は必ずしもconsisting ofを意味しているとは限らないと解釈せざるを得ないことから、訳語としてはcomposed ofやcontainingといったものも認めることにした。しかし、通常の化学分野の英文作成においては、このconsisting ofとcomprisingの違いは常に意識して翻訳していただきたいと思う。また、通常、方法クレームは、1つまたは複数の「工程(ステップ)」を含むものとして定義される。この際、米国のクレームは、Preamble、Transitional phrase(=comprising)、Body(=steps)の構成をとる点を知っておいていただきたい。この方法クレームのどの部分が能動的な工程にあたるのか、その点をよく考えて訳出していただきたかった。なお、粉体の訳語として、ほとんどの受験者が「powder」を採用していたが、この単語は、可算/不可算、単数/複数をどのように考えるか、多くの日本人翻訳者には扱いが難しい単語であったように思われる。このほかにも全般に、冠詞や複数形の使い方には、改善の余地があると思われる訳文が散見された。また、原文に「を特徴とする」とある場合でも、クレーム中では「wherein」とすればよく、必ずしも「characterized in that」と訳す必要は無い点(特に米国向けのクレーム)も憶えておいてほしい。

 特許翻訳はチェッカーがチェックしますので、顧客としては原文の記載順に翻訳してくれるとありがたいです。
 なお、タイプライター時代は文末ピリオドの後ろはスペース2個空けていましたが、現在は文字間隔は自動調製されるのが普通ですし、特許文献はコンパクト性を求められることに鑑み、参考答案ではスペース1個にしています。

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1級/バイオテクノロジー

第34回 知的財産翻訳検定 1級/バイオテクノロジー  講評

【総評】
 今回は全体的に低調な成績でした。極端に知識を必要としたり、わかりにくい日本語表現はなかったと思われますが、いずれの受験生も、細かい減点が重なって、成績を落としていました。特に、日本語の単語を単に英語の単語に置き換えていったために、英語としての表現になっていない答案が多く見受けられました。翻訳は、単語ごとの置換ではありません。英語として読めなければ、翻訳にはなりません。英訳したものを、英語として読んでみて、不自然な部分はないか確かめる作業が必要です。

【問1】
 背景技術の問題ですので、採点においては、表現の幅は比較的広く認めましたが、バイオテクノロジーの分野ですから、「ツバキ科ツバキ属」は間違ってほしくない表現です。「茶の実」は直訳すると、tea fruitですが、すぐ後に(種子)と記載されていること、三段落目に「茶の実は・・・殻果状の種子である」などとあることから、ここでは同義で使用されているものと思われます。ただし、fruitと訳しても減点はしていません。日本語で「比」はかなり広い意味を持ちます。ここでは、「重量比」といいながら、%で表されていますが、英語ではratioは%で表すことができません。ratioは、あくまで狭義の「比」または「比の値」を意味します。

【問2】
 「何ら特別の装置を必要とせず」の部分を"equipment without"などと英語らしく表そうとしている方がいましたが、withoutを用いると、「特別な装置を付属しない通常の設備」と読めてしまい、日本語と若干意味のずれが生じます。「蚊又はハエ取り線香」ですが、辞書などでは、mosquito coilなどとも表されています。しかし、ここでは、本発明が「蚊又はハエ取り線香」であるとわかりますので、coilとすると、渦巻き状の物しか含まなくなってしまい、権利範囲が狭くなってしまいます。「予め」も間違えが多かった表現です。日本語を和英辞書で調べて、出てくる表現が何でもいいわけではありません。普段から、類語の使い方の違いを丁寧に勉強するようにしましょう。「前記のような個別による配合に比し、」について、as previously describedを文の最後においていた人が複数いましたが、そうすると、「個別による配合に比し、良好な殺虫効力を得ることができる」ことが前記のように読めてしまいます。そうではなく、「前記のような」は直前に書かれている「個別による配合」にかかりますので、そのように訳す必要があります。翻訳した英文を読めば、内容の矛盾に気付くはずですので、一旦訳した英文を、英文としてきちんと理解する作業が必要です。

【問3】
 実施例の設問であり、技術内容や実験手順をイメージして翻訳できるか、そして、「付着し」「隔離され」等の専門用語の訳を正しく選択できているか見るのが出題の意図でした。「寄生虫の速度は低減および/または停止され」という箇所は、velocity ... was stoppedやspeed ... was stoppedなど、そのまま英語に変換しただけの答案が目立ちましたが、英語として読めるようにすべきです。また、実施例が過去形になっているにもかかわらず、現在形で訳している答案がありました。実施例を現在形で訳すのは、原文が現在形のときです。実際に実験していないときは、ペーパー実施例として現在形で表記するのが実務慣行です。ところが原文が過去形で書かれている実施例を現在形で訳すと、実際に行った実験が、翻訳文上は行っていないことになるため、翻訳が原因で拒絶理由や無効理由となり得ます。

【問4】
 請求項の問題であり、定型的な構文を使いこなせるか、及び、クレームしている範囲を意識しながら請求項1と請求項2の違いを訳し分けられるか、といった点を見るのが出題の意図でした。前者については、移行句が重複していたり、基本的な構文が身についていない答案が見られました。後者についても、請求項1の「視床後外側腹側核内の少なくとも1つの感覚神経線維が走行する領域」は1つとは限らないため、領域の冠詞はaとすべきですが、theとしている答案が目立ちました。領域が1つとは限らないことは請求項2からも読み取れます。クレームでは、aとtheを間違えるとたちまち権利範囲がおかしくなるので、冠詞の間違いは厳しく採点しました。日本語から英語への翻訳において冠詞は非常に重要であるため、定冠詞と不定冠詞はきちんと使い分けられるようにすべきです。なお、「これにより・・・症状を有する」をwhereby ...と訳している答案がありましたが、wherebyは、それ以下の文言が構成要素とみなされない可能性があるため(MPEP 2111.04)、クレームでは避ける方が無難でしょう。

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2級

第34回 知的財産翻訳検定 2級 講評


【問1について】
1.問1は、物質名がよく出てくるので名詞の概念、すなわち単複、冠詞が大事です。
 バイオマスは概念語なので単数biomass、リグニンは単独の物質名なので無冠詞単数lignin、糖類は類がついているのでわかるようにいろいろな物質の総称なので無冠詞複数sugarsとなります。

2.二酸化炭素排出量の低減において<量>を見落とした訳が大変多くありました。
 意味は変わらないではないかと思うかもしれませんが、こういう小さい見落としがあると、ほかにも忠実さで問題があるのではないかという目で見なくてはならず品位評価が低下します。減点はしませんが、品質評価の大事なポイントです。

3.成分という語は、要素という意味のcomponent、element、構成要素のconstituentなどがありますが、ingredientは、原意は原材料、中間体、含有物という意味であり、課題文の文意ではこの語を使うと良いです。

4.「溶解部分として回収する」の<溶解>はこれから溶解させることができるのであって(soluble)、biomassのなかでdissolveされているのではありません。取り出すとき、または分離したあとにsolubleな成分という意味なのです。したがってsoluble/insolubleという組み合わせが正しいのです。「溶解」をmeltとした答案が複数ありましたが氷を水にするとか、金属を加熱して溶かすのがmeltです。

5.「超臨界または亜臨界などの高温高圧雰囲気」は、超臨界雰囲気または亜臨界雰囲気などの高温高圧雰囲気という意味です。
 日本語の理解の問題です。
 such as supercritical or subcritical と形容詞で終わってはいけません。
 such as supercritical or subcritical conditionsなどとしなくてはなりません。


【問2について】
1.問2は、ワクチンの注射器などで話題になったデッドスペースをなくすための時宜を得た技術として出題しました。
 「内腔」という用語は他の文献を見てもこの業界では使われているようですが、「腔」は人体の「空洞」という意味なのでここではlumenは不適当で、boreなどとすべきでしょう。

2.押子は表現に工夫が必要ですが、括弧表現をなくしてplungerでいいでしょう。


【問3について】
1.「装着用具」という日本語は曖昧ですが、実態はメガネとか被り物であることは明らかですから、何かを装着するための ”wearing device”とか ”mounting tool”などとせず、それ自体が体に装着できる “wearable device”であることは明らかです。

2.信号というものは通常はいろいろな信号があり得るので、signalsと複数にして用いるのが普通でしょう。

3.請求項3では、新たな要素が加わっているので、further comprisingがよいと思います。

4.従属請求項のなかで、「前記装着用具本体が左右のレンズを備えた眼鏡であり」をbe動詞で表現した例が多く見られましたが、beを使うとその前後が1:1の関係になり、範囲が限定されてしまうことから、「有する、含む」と解釈してcompriseとするのが米国で普及している実務です。

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3級

第34回 知的財産翻訳検定 3級 講評


 解答例と解説をご覧ください。


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